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LINE基盤を活用した来庁予約システムの導入で市民の利便性が向上!「なんでも来庁予約」

LINE基盤を活用した来庁予約システムの導入で市民の利便性が向上!「なんでも来庁予約」

C-tableでは、LINE IDと連携したID基盤と市役所が使用する来庁予約管理システムを新たに開発しました。これらを連携させることで、LINEによる来庁予約を可能にしました。今後は、整備したID基盤から適切な情報発信や各種サービスの拡充も可能になります。

プロジェクト概要 

山梨県都留市では、これまで毎年の確定申告に関する来庁予約の受付を電話で行っていました。これまで、電話による来庁予約は市民にとっては使い勝手の悪い予約システムになっていました。なぜなら、市役所の営業時間しか電話対応が難しく、かつ繁忙期は電話が繋がりにくくなるため利便性の観点で課題を抱えていました。また、市役所の担当部署には、期間中1,000件以上の電話予約が殺到するなど、市職員の業務の逼迫が課題となっていました。
そこでC-tableは、「なんでも来庁予約システム」の提案・開発をいたしました。これにより市民はLINEで確定申告の来庁予約が可能になりました。
今後は、整備したID基盤から適切な情報発信や各種サービスの拡充も可能になります。「市民のニーズ」をすくい上げるワークショップの開催や、オープンデータの活用、デジタルリテラシーの向上などを通じ市民と行政が一体となって課題解決を行う「シビックテック」によって更なるアップデートを目指していきます。

コロナ禍で迫られた「確定申告相談の変革」

都留市市役所 税務課 市民税係
長谷川 千絵子様

—今回のお取り組みを始めた経緯について教えてください。

コロナ禍以前は、確定申告相談の受付は予約制ではなく、市役所に来庁してから受付まで待っていただく形で提供されていました。
しかしコロナ禍の影響で、感染予防の観点から予約制を導入する必要が生じ、電話予約を開始しました。電話予約は、他の来庁予約でも一般的に使用されていた手段でしたが、やってみたところ思いのほか大変でした。通常業務に加えて確定申告の期間中に約1,000件の電話予約業務が必要で、職員の負担が大幅に増加してしまったのです。

また、市民からは電話が繋がりにくく、予約がしづらいというお声も寄せられていました。一方で、令和2年12月には国全体で行政におけるデジタル化の取組強化のため「自治体DX推進計画」が策定され、本市においても、デジタル技術やAI等の活用により住民の利便性を向上させるとともに、業務効率化を図り、人的資源を行政サービスの更なる向上に繋げていくため、全庁的なDXを進めております。
そのような中で、新型コロナウイルス感染症対策の目的として、来庁することなく市民サービスの利用を可能にする「デジタル市役所」の実現への研究・検討が進められていました。「確定申告相談」で抱えていた問題、課題点の解決手段になるのではとの思いから、庁内DXを横断的に推進する行財政改革推進班のDX推進ワーキングに相談し、「都留市公式LINEアカウント活用サービス」の「なんでも予約システム」の導入することが決定しました。

—実際に導入されてみていかがでしたか

実際にLINEでの来庁予約システムを導入した今回の確定申告では、全体の約20%がLINEを通じた予約でした。確定申告に来られる方の多くが高齢者であることを考慮すると、この結果は大きな成果と言えると思います。また、例年と比較して市民からの来庁予約に関するご意見が圧倒的に少なかったように感じます。市民の皆様にご満足いただけた結果だと実感しています。

本システムの導入により、市役所職員の負担も軽減されました。改善を実感した点が2つあります。
1つ目は、電話予約の件数が削減されたことで、市役所職員が電話予約対応をする必要がなくなりました。今年は電話予約専用のスタッフを雇うようにしたという背景もありますが、電話の件数が減少しなければ、市役所職員も対応に追われたと思います。
2つ目は、来庁予約システムの信頼性です。今回は、LINE予約枠と電話予約枠を同じシステム内で管理できるように開発していただきました。これまで予約枠の管理はExcelを使っていました。Excelの共有機能では色々な不具合が出ることが多く、電話を受けたそれぞれ各人が予約枠をシートで管理し、最終的に突合する方法を取らざるを得ませんでした。
しかし、今回のシステム導入により、LINEによる来庁予約枠と電話予約枠を同じシステム内で管理できるようになり、誰でも最新の情報を確認できるようになりました。その結果、前年度よりもスムーズに仕事を進めることができ、電話予約スタッフの電話対応時間も短縮されたと感じています。操作も非常にシンプルで、どの職員が使っても迷うことがなかった点も良かったです。

—今回の取り組みはいかがでしたか

「多くの市民が利用しやすいシステムを作る」という理想を追求しすぎるあまり「どこまでシステムでできるようにするか」という線引きは非常に難しいものでした。
行政職員の業務効率化だけが目的ではなく、あくまで市民が使いやすくなることが大切です。しかし要件定義の段階では、市民のニーズが具体化していない為、バランスを取る必要がありました。C-tableからは、要件定義の進行中に事例などを共有してもらいながら、市民目線での開発という点でもサポートしていただきました。

多くの市民に利用してもらえるように、当初は多くのパターンでのアプローチを検討していましたが、C-tableからの提案を通じて、実際にはそれほど複雑にする必要はないという点もクリアになりました。むしろ、シンプルにしたことで、より受け入れやすくなったと思います。LINEによる来庁予約を利用できる人とそうでない人がいますが、LINEによる来庁予約を知って、試してみようと思う人たちを取り込むことができたのは良かったと思います。

C-tableは、一度聞いたことに対して、とても迅速かつ正確にレスポンスがあり、取りこぼしがなかったことに感心しました。業務で使用するシステム関連で、SEとのやり取りでは行き違いやタイムラグが生じることもありますが、今回はそれがなく、スムーズに話を進めることができました。公開までのスケジュールが非常にタイトであったにもかかわらず、何かあっても慌てることがなく、修正点も迅速かつ適切に対応していただけたことに安心感を感じました。期待に対して120%応えていただけたように思います。

—今後について

自治体は市民サービスの向上を目的として様々なシステムを構築しますが、新しいシステムに市民からは「いいわ、めんどくさい」と一蹴されることもあります。しかし今回、既存のアプリである「LINE」を活用した来庁予約システムを導入することで、そういった部分を緩和できたのではないかと思います。来年度以降の確定申告のサービス提供方法については未確定なこともありますが、今後はLINEのpush通知を活用して、ダイレクトに市民とコミュニケーションする手段にもなりうるので、その点も期待しています。

確定申告の相談において、ペーパーレス化が進められていない箇所があるのも今回見えてきた課題です。申告の内容によって準備していただく書類が異なり、その煩雑さからここでも市民から「いいわ、めんどくさい」とおっしゃられてしまいます。煩雑な手続きをなるべく簡便にし、誰でも取り入れやすいシステムを提供することが究極のICT化だと考えていますので、市民にとって簡単に利用できる来庁相談システムを提供し、より多くの人々が利用できるようになることを目指していきたいです。

「俺がやらないと都留市のDX化は進まない」という情熱

C-table株式会社 開発担当エンジニア
矢野宗一郎

—今回の開発を振り返って

今回の「なんでも来庁予約システム」の開発は、非常に厳しいスケジュールでしたね。
実際に開発が始まったのは2022年10月下旬頃で、そこから要件定義を始め、2023年2月1日にリリースをしました。このような短いスケジュールで、今回のような大規模な開発を行うことはかなり無理のあるスケジュールでした。

私も他の開発案件にも取り組んでいたので、決して余裕があったわけではありません。でも、「俺が作った方が絶対いいものができる」という自信があったし、「俺より必死になって開発できる人はいない」と思ったんですよね。

この自信は、以前に都留市のローカル情報に特化した「まちマーケット」というサービスのLINE基盤を開発した経験によるものかもしれません。
「なんでも来庁予約」の構想段階で、この事例を参考にすれば、都留市のDX化が大きく前進できると思いました。
「まちマーケット」は、「#みんなのLINEビジネス」で特別賞を受賞した取り組みなのですが、これは単なる一時的なシステム開発に留まらず、継続的に地域の生活をデジタルで改善することができた好事例でした。
この成功事例を参考にすることで、将来的には都留市のLINEを基盤としたワンストップの市民サービスを展開することができると考えました。

—システム開発における要件定義と顧客ニーズの調整について心がけていることは?

私が以前勤めていた会社では、システムを納品したにもかかわらず、実際に作ったシステムが使われない経験ばかりでした。要件定義通りのものを作って納めても、後になって要件以外の新たな要望が出てくることがしばしばありました。この場合、新しい機能を開発する必要があり、そのためには追加費用がかかるため、社内で稟議が必要になります。そうなると、なかなか社内で稟議が通らず、結局使われなくなってしまう。こんなことの繰り返しでした。
顧客のもっとこうして欲しいというアイディアを形にするスキルがあるにも関わらず、それを発揮する機会がないことがとても不満だったんです。

プログラミングは単なる手段であって、エンジニアとしての本質は課題を発見して解決することだと思うんです。だからこそ、私は自分が開発するシステムが本当に使われるシステムになるかどうかという疑問を抱き、開発に取り組んでいます。
そこで、今回も私自身が直接長谷川様から現場の課題を詳しくヒアリングして、要件を決めていきました。普通は、エンジニアが要件をヒアリングして開発することは珍しいんですが、2週間に1回ほどのミーティングを重ねて、実装したシステムを見てもらいながら修正を繰り返し、リリースをしました。

—今後について

結局、「俺がやらないと都留市のDX化は進まない」と思ったのは、私が都留市の住民だからというのも大きいですよね。やっぱり地元のためにより良いシステムを作りたいという気持ちは強かったです。
自分がユーザーであり、開発者であるという二つの立場を持つことで、より価値のある成果を生み出すことができると思うんですよね。だって自分が作ったシステムを自分が使うわけですから。それは俺よりも必死になれる人はいないですよね。
あとは、実際のユーザーが身近にいて、ユーザーの声を直に聞くことができることも面白いですね。実際に家族から自分が作ったシステムを実際に使用して「このシステムは使いづらい」とダメ出しされることもあるんですよ(笑)

このような取り組みは、市民と行政が協力して課題解決を行う「シビックテック」の典型例だと思います。これから、このような取り組みを全国に拡げていきたいですね。
いまは、地域の課題解決に市民が主体的に取り組むことが求められる時代です。これから、C-tableのシビックテックのアプローチをさらに拡げるため、「地域DXスクール」の開設も計画しています。地域の課題解決に向けた取り組みを全国的に広げ、市民が自治体と協力して課題を解決する未来を実現していきたいですね。

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