やっていること

開始1年で55%がオンライン化「公共体育施設の予約・決済」をDX

開始1年で55%がオンライン化「公共体育施設の予約・決済」をDX

プロジェクト概要

スポーツやイベントを行う際に利用ができる市民体育館などの公共体育施設。今まで都留市で施設を利用するためには、市役所の窓口にて予約申請手続きを行う必要がありました。予約の度に市役所を訪れることは大変であると感じる市民も多くおり、これまで何度も「予約申請のデジタル化」が検討されてきました。しかし、多くの市民に広く公平に利用してもらう為の「調整業務」など独自の複雑な業務プロセスから、デジタル化が断念されてきました。

市民の持つ「便利に施設を利用したい」というニーズと「広く市民に施設を利用してほしい」という市役所の想いから産まれた独自の業務プロセスは、本来相反するものではありません。C-tableでは、施設予約に関する利用者・市役所の業務をヒアリング・分析し、デジタルでの予約・決済機能を開発しました。

結果、リリースから1年もたたずに予約申請の55%がオンライン経由となりました。また、実際にオンラインで予約をした利用者向けアンケートでは100%のユーザに「デジタルで予約できるようになって便利になった」と回答いただきました。

「正直、システム化は難しいのではないかと思っていました」

都留市教育委員会 生涯学習課  スポーツ振興担当
髙部 拓 様

—これまでの課題は?

体育施設のオンライン予約が始まる前は、予約をするためには、市民の皆さんには2回市役所に来ていただく必要がありました。

まず最初に、市役所の開庁時間内に窓口に来ていただき、予約手続きを行います。その後、抽選結果を確認するために再び市役所にお越しいただき、利用料金のお支払いをしていただく手続きが必要でした。この手続きは、市民の皆さんに非常にお手間をおかけしていました。

また、市役所の職員としては、通常の業務に加えて窓口の予約対応業務や予約状況に関するお問い合わせへの対応も行わなければならず、負担が増えていました。

 

—長年このような運用をされていた背景は?

実は、予約の決定までのプロセスが少し複雑なのです。全ての予約を先着順などのシンプルな方式で運用しているわけではなく、市民の皆さんがスポーツ施設を最大限に活用できるように配慮しながら、独自の調整を行っています。

例えば、先月予約ができなかった団体を優先するといった判断や、大会を控えた団体に練習時間を確保させるため優先するといった判断も行います。また、競技によっては体育館の一部を利用することで他の団体も使用できるケースもあります。

これらの調整業務は、個別の状況や要件に基づいて行われているため、マニュアル化が難しい側面もあります。各団体やイベントの要件や優先度は多岐にわたり、一律のルールや手順で対応することができないため、システム化は非常に難しいのではと思っていました。

 

—今回のプロジェクトはいかがでしたか?

私自身がこの業務に携わり始めた時、前述のような予約のプロセスを理解するのにかなり苦労しました。ですから設計の段階で、まずその複雑なプロセスを理解してもらう必要がありました。
利用予約の申請書式や様々な条例についても、打ち合わせの中で確認を行いました。
かなり大変だったと思いますが、C-tableがこちらの業務プロセスの苦労も理解してくれて、スムーズに話が進められたと感じています。

この体育施設予約システムの導入により、他の市区町村からも同様の予約業務を行っている方々から開発内容についての問い合わせを頂くことがあります。
昔ながらの窓口業務が主流とされる地方において、先進的なシステムへのアップデートは私にとっても多くの学びとなりました。

予約システム導入後、スポーツ施設の予約受付の窓口対応が減少しました。
また、以前は紙ベースで予約管理を行っていましたが、現在はオンライン上のシステムで簡単に予約の確認が可能となりました。予約状況のお問い合わせの電話対応時間が短縮され、職員の業務効率も向上しました。

 

—市民からの反響は?

市民の皆さんからは、「とても便利になったよ」という声をいただいています。
市役所まで足を運ばなくてよくなり助かると。

体育施設予約システム導入後、予約の約70%がオンライン予約になりましたので、その利便性の高さが伺えます。
市役所としても、このシステムの導入により手応えを感じています。

—今後について

オンライン利用率をさらに向上させることが目標です。
まだオンライン予約を活用されていらっしゃらない市民の皆さんにもご興味を持っていただけるように、窓口にタブレットを設置して、市民の皆さんにオンライン利用のメリットや手続きの簡便さを周知していけるようにしていきたいと思っています。

今回、先ほどお話した調整業務がオンライン予約で自動化されたわけではなく、いまでも手動での調整業務も並行して行っています。
このような調整業務は、効率の観点からすると、もしかしたら必要のないことかもしれません。ルール化してしまった方が行政としては正解なのかもしれません。

例えば、10万人規模の自治体ではこのような調整業務は不可能だと思います。ただ、都留市の人口規模であればまだできる余地があると考えていますし、顔が見える地方の良さでもあると思っています。

デジタル技術を活用しながらも、地方ならではの良さも残しつつ、市民の皆さんがスポーツ施設を最大限に活用できるように、市民の利便性や満足度を向上させるための取り組みを進めていきたいと考えています。

 

「エンジニアとして転機になったプロジェクトでした。」

C-table株式会社 開発担当エンジニア
矢野 宗一郎

—今回の取り組みで一番ユニークだったところは?

以前都留文科大学の学生さんが、都留市の企業でのインターンシップ授業の一環として、弊社C-tableに実習で来ていたんです。
その際、インターンシップで取り組む課題を見つけるために、弊社代表の田邊が学生さんに都留市における現在の問題や課題について尋ねました。
すると学生さんから「体育館を借りるのが不便だ」という話が上がったんです。

僕はそこまで運動が好きなわけではないので、長年都留に暮らしていながら、体育館を借りるのがそんなに不便だと知らなかったんですよ。
だったら、オンライン予約できるようにしたらどうかと学生さんと一緒に市役所に提案したところから取り組みが始まりました。

市民である学生さんと一緒に、インターンシップを通じて都留市の課題に取り組むという取り組みはとてもユニークだったと思います。

—まさにシビックテックですね。

そうですね。
市民がテクノロジーを活用して都留市の課題を解決できたという点で、この取り組みはまさにシビックテックだったと思います。
正直に言うと、オンライン予約率が7割まで拡大するとは予想していませんでした。大学生の皆さんが便利になればいいなくらいに思っていたので。
都留市の体育館利用の申請は年間2千件以上ありますから、大きな貢献ができたプロジェクトとなりました。

—しかし開発はとても大変だったと聞きました。

僕史上、No.1大変だった開発だと思いますよ!(笑)
いざ開発することが決まって、仕様を伺いに行ったら、正直に言って「爆弾を引いたな」と思いました。こんな複雑な仕様になっているとは知らなかったんです。

ヒアリングしながら要件を明確化していく過程で、新たなルールが浮かび上がることもたびたびありました。

一番大変だったのは、施設利用料の計算ロジックですかね。様々な要素を考慮する必要があって、条例を全て読み、申請用紙を確認し、料金を対比させ、組み合わせのパターンを洗い出して、最終的なロジックとして実装しました。もう複雑すぎて、心が折れそうになりました。

でもやはり、体育施設を利用するのを楽しみにしている市民の皆さんがたくさんいらっしゃるんですよね。そういう方を切り捨てるという選択肢はありませんでした。開発はとても大変でしたけど、市民のためにはとても良かったと思っています。

—プロジェクトを振り返ってみて

頼まれていなかったのですが、最初の1ヶ月くらいは、市役所に常駐して利用者の方々にオンライン予約のデモを行いました。その結果、だんだんと導入してくださる方も増えて、自分の近くで自分の作ったシステムが使われるという経験をして、変化を間近で見られることが楽しかったですね。

自分の作ったシステムを市民の皆さんが使ってくれて、便利になった!という声が聞こえたら最高に嬉しくありませんか?だから、もちろん都留市から請け負った仕事なのですが、仕事という感覚がなかったですね。僕にとっても転機となったプロジェクトとなりました。

—今後について

地方でも東京と同等の高品質なシステムを導入し、地域の人々が利用できる環境を実現できればと思うんです。地方でもシステムを実装できる能力のあるエンジニアがもっと集まったらいいなと思うんですよね。

でもそういうエンジニアは、大抵都内の方に行ってしまうんです。そういう格差があって、地方がシステムの恩恵を受けられない状態になっているのが嫌なんですね。
自分は地方にいるエンジニアとして、デジタル技術を通じて社会を変えていきたいです。

今後、地方での技術教育やIT関連のスキル向上のため、シビックテックスクールを開校する取り組みを進める予定です。もしご興味があれば、ぜひお問い合わせいただきたいです。

 

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