映像制作会社様向け 生成AIワークショップレポート


はじめに
この度、映像制作、編集、デザインといったクリエイティブ業務を担う株式会社ZOU様を対象に、生成AI体験ワークショップを実施しました。
参加者の多くは、事前の自己紹介ワークで、既にChatGPTなどの生成AIを日常的に使用しており、画像作成、メール文の作成、企画のアイデア出し、作曲など、多岐にわたる用途で活用していることが確認されました。一方で、「便利だが、用途に応じた使い分けがわからない」、「効果的なプロンプトの出し方を知りたい」といった、より実践的な知識への期待が高いことも明らかになりました。


そこで今回のワークショップでは、以下の3点をゴールに設定しました。
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生成AIの全体像と主要ツールの理解
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業務に直結する具体的な活用方法の体得
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自社の業務課題に生成AIを活用する実践力の獲得
座学だけでなく、実際に複数の生成AIツールに触れ、グループで業務課題の解決策を検討するワークショップ形式を採用することで、参加者の実践意欲や行動変容に寄与することを目指しました。
参加者アンケート結果
ワークショップ終了後、参加者13名全員からアンケート回答をいただきました。生成AIに既に触れている方が多い中、新たなツールの発見や実践的な活用法への高い満足度が確認されました。
定量結果(10点満点)
満足度:平均9.4点
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10点(非常に満足):62%(8名)
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9点:15%(2名)
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8点:23%(3名)
77%の参加者が9点以上と回答し、極めて高い満足度が得られました。


業務活用意向:平均8.8点
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10点(非常に活かせそう):46%(6名)
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9点:23%(3名)
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8点:15%(2名)
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7点:15%(2名)
全参加者が7点以上と回答し、業務への具体的な活用イメージを持つことができました。


ワークショップ形式の有用性:平均9.5点
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10点(非常に有用):69%(9名)
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9点:15%(2名)
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8点:8%(1名)
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5点:8%(1名)
講義だけでなく、グループワークやAIとの対話を取り入れた実践形式が高く評価され、84%の参加者が9点以上と回答しました。


同僚・知人への推奨度:平均9.2点
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10点(強く勧めたい):62%(8名)
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9点:15%(2名)
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8点:23%(3名)
全参加者が8点以上と回答し、ワークショップの価値を実感していただけました。


総括
定量結果から、参加者の満足度9.4点、業務活用意向8.8点、推奨度9.2点という高い評価が得られました。特に注目すべきは、全参加者が業務活用意向7点以上、推奨度8点以上と回答している点です。これは、既にAIを使用している参加者にとっても、新たな学びと実践的な価値があったことを示しています。
また、ワークショップ形式の有用性が9.5点と最も高い評価を得たことから、座学だけでなく、実際にツールに触れ、グループで議論し、自社の課題に落とし込むという体験型の学習アプローチが効果的であったことが確認されました。


インプット講義①(生成AIの基礎知識)
講義の前半では、生成AIの基礎知識と、参加者が関心を寄せていたリスクと注意点について解説しました。
生成AIの全体像
従来のAIが「過去のデータから最適な答えを判断する」のに対し、生成AIは「学習した知識に基づき、新しい文章、画像、音声、コードなどを新しく作り出す」技術であると説明しました。
特に、ChatGPTの登場により、専門的な知識がなくても自然な言葉でAIに指示できるようになったことが、普及の大きな要因とされました。
世界と日本の生成AI活用状況
世界と比較し、日本は生成AI活用において遅れをとっており、利用率も26.7%に留まっているという現状を共有しました。
企業における活用では、「業務効率化」が主な目的である一方、導入を妨げる要因として以下が挙げられる状況を共有しました。
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AIをリードする人材の不足
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ルールや推進体制の不足
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具体的な効果の評価が難しいこと
インプット講義②(生成AIで仕事を楽にする方法)
講義の後半では、エンジニアによるデモンストレーションを通じて、映像・クリエイティブ業務での具体的な生成AI活用方法を紹介しました。
プロンプト設計の極意
生成AIに高精度な出力をさせるには、「曖昧な指示には曖昧な答えしか返ってこない」という点を踏まえ、以下の要素を加えて具体的な指示を出すことが重要であると説明されました。
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役割を与える:「あなたはプロの編集者です」のように、生成AIに振る舞うべき役割を指定する
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背景のインプット:どんな状況なのか、どういう悩みを持っていて理想はどうしたいのかなど、背景情報をしっかり入れることで、一般論ではない解決策を引き出せること
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具体的な出力条件:文字数、形式、トーン、ターゲット層などを明確に指定する
さらに、「プロンプト自体を生成AIに作ってもらう」という手法も紹介され、参加者から大きな反響がありました。
業務別ツールの紹介とデモ
画像/デザイン(Nano Banana)
Google Workspaceで利用可能なNano Banana(Gemini内)は、元の画像の情報(人物のポーズなど)を維持したまま、服装や背景などの修正・加工を迅速に行える点が画期的であると紹介されました。
リサーチ/営業(Deep Research)
雑なプロンプトをまずChatGPTで拡張してもらい、そのプロンプトでDeep Researchを流すことで、営業先の情報収集や、見込み客のホームページの有無や新旧をフィルターにかける高精度なリスト作成に役立つことが示されました。
会議効率化(tl;dv / NoteBook LM)
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tl;dvはオンライン会議で自動で録画・文字起こし・要約を行い、その議事録データからChatGPTやClaudeを使って次のアクションや進行計画を抽出できるデモが行われました。
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NoteBook LMは、ボイスメモなどで録音した音声データ(文字起こし)から記事のドラフトを自動で作成できるツールとして紹介されました。
業務自動化(Defi)
メール分類、顧客リサーチ、返信文案の自動生成など、定型業務フロー全体をノーコードで自動化できるツールDefiの概要が示され、業務効率削減の可能性が示唆されました。
資料作成(Gamma)
参加者からも特に高評価を得たプレゼン資料作成ツールGammaは、テキストを入力するだけで構成を整え、デザイン性の高いスライドを自動で作成できる点が強調されました。多くの参加者が「今日から使いたい」と回答し、即座に業務に活用できるツールとして注目されました。


インプット講義③(生成AIのリスクと注意点)
業務利用にあたって不可欠な、特に注意すべき4つのリスクを共有しました。
1. 情報漏洩のリスク
機密情報や個人情報はAIのサーバーに送られ、学習に使われる可能性があるため、入力しないことが基本原則とされました(有料版では内部にとどめる設定もある)。
2. 著作権・知財リスク
ネット上の著作物や有名キャラクターなど、著作権や肖像権を持つものを元データに使うことは避けるべきであると説明されました。
3. 誤りや偏り(ハルシネーション)
AIは「最もらしい嘘」をつくため、特に統計データや法律など、裏付けが必要な情報については、必ず人間が根拠を確認する必要があるとされました。
4. 依存リスク
AIはあくまで補助ツールであり、すべてをAIに任せすぎず、どこまでを自分で考え、どこからをAIに任せるかという切り分けを意識することが重要であると強調されました。
ワーク:業務課題の解決策を聞いてみよう
参加者は、実際に抱える業務課題(時間がかかっていること、困っていること、改善したいことなど)を洗い出し、その解決策を生成AIに相談しました。
ワークの流れ
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課題の洗い出しと絞り込み:個人で「時間がかかっていること」「困っていること」を全て洗い出し、グループ内で「どうしても解決したい課題」を一つに絞り込みました。
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生成AIへの相談:絞り込んだ課題について、ChatGPTなどに背景情報をしっかりインプットした上で、「解決策のアイデア」を複数提案してもらいました。
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発表とフィードバック:アイデアの実現可能性や、「業務時間削減などのインパクト」を考慮して解決策をまとめ、発表しました。
具体的な課題とAIを用いた解決策の検討例
課題1:打ち合わせ議事録の効率的な作成と聞き漏れ防止
会議中のメモ取りに集中しすぎて、議論に参加できないという課題が挙げられました。また、聞き漏れによる認識のズレも問題となっていました。
生成AIによる解決策:
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tl;dvで録画・文字起こし・要約を自動実行
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生成された議事録をChatGPT/Geminiで今後の進行計画を具体的に作成させる
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発言者ごとに整理し、担当タスクを明確化
インパクト/実現可能性: 実現可能性が高く、すぐに導入可能。ただし、対面会議での発言者認識の難しさが課題として残る。オンライン会議であれば即座に導入できる。
課題2:外部編集者への発注時に、要望伝達の効率化と認識のズレ解消
外部編集者に動画編集を依頼する際、口頭やテキストだけでは意図が伝わりにくく、認識のズレが発生。結果として何度も修正が必要になり、時間がかかっているという課題が共有されました。
生成AIによる解決策:
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生成AIで依頼テンプレートを作成し、伝えるべき項目を標準化
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参考動画をベースにしたサンプル動画/静止画を事前に作成して渡す
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生成AIで「こういう雰囲気で」という抽象的な要望を具体的な指示に変換
インパクト/実現可能性: 打ち合わせ時間の削減(30分〜1時間)につながる。外注先とのコミュニケーションコストが大幅に削減され、修正回数も減少する見込み。
課題3:企画案作成時、自分の頭にない面白い視点の創出
企画を考える際、いつも同じような視点やアイデアになってしまい、クライアントに驚きを与える「尖った企画」が出せないという課題が共有されました。
生成AIによる解決策:
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生成AIにユニークな切り口を提示させる
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複数の切り口を組み合わせて新しい企画の種を生成
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そこから企画のヒントを得て、人間がブラッシュアップ
インパクト/実現可能性: 尖りすぎた案が出た場合、広告主に理解されない可能性や、制作スケジュールの現実性が課題となる。ただし、アイデアの幅を広げる「壁打ち相手」としては非常に有効。




参加者の気づき・学び
ワークショップを終え、多くの参加者から「生成AIは業務効率化に貢献する」というポジティブな感想が寄せられました。
可能性の発見と多様なツールの理解
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「今までChatGPTしか使えていなかった」
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「知らない生成AIはもちろんたくさんありましたが、知っている生成AIでも使ったことない機能があることがありました」
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「今まで聞いたこともなかった生成AIやその性能を知ることができた」
ツールの組み合わせ(クロス利用)の重要性
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「ツールをクロスして活用することによりアンサーの精度がグッとあがること」
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「ChatGPTで情報を整理して、Deep Researchでもっと掘り下げること。企画を作ったり、クライアント理解を深めるためのフローとして有効だなと感じました」
AIを相談相手・壁打ち役として使う
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「プロンプトを考えるところから生成AIに委ねてみること」
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「プロンプトも生成AIに相談すればよかったんだ!と思いました」
Gammaなどのツールの即効性
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「Gammaのスライド制作のスピードとデザインの良さは今日から使ってみます」
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「普段から資料作成をしているのでGammaを使ってみようと思いました」
グループワークの価値
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「普段話さない人とグループだったので、こんな風に使っているんだということを聞けました。講師だけじゃなくてメンバーからもインプットができました」
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「いろんな人の考え方や、課題などが聞けたのと解決策を一緒に考えられるのはすごく良かった」
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「違う立場の方の意見や、考えがあり発見に繋がった」
今後への期待と学習意欲
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「生成AIは可能性があり、なるべく早く使って慣れていかないとです!」
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「これからは間違いなく必要。サービスに、人がいらない、介在しないのが当たり前の世の中になっていくと思う」
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「もっと駆使していきたい!絶対に仕事の効率上がる!」
具体的な業務への適用
明日からの具体的な行動として、以下のような声が挙がりました。
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「Gammaを使った資料作成!」
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「tl:dvなどはすぐに取り入れたい。資料作成ではGammaを使っていきたい」
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「プロンプトの作成すら生成AIに指示すること」
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「ChatGPTで情報を整理して、Deep Researchでもっと掘り下げること」
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「イベント告知の簡単な画像。Instagramのアイコン作成」


まとめ
今回のワークショップを通じて、既に生成AIを使用していた参加者の皆さんに、ChatGPT以外の多様なツールの存在と、それらを組み合わせることで得られる相乗効果を体験していただきました。
さらに、資料作成(Gamma)、会議効率化(tl;dv)、企画立案(Deep Research)など、普段の業務効率化に直結する活用法を具体的にイメージでき、「今日から始められる」という確かな実感が得られたことは大きな成果です。
特に印象的だったのは、「プロンプト自体を生成AIに作ってもらう」という発想の転換や、「ツールをクロスして活用することでアンサーの精度がグッとあがる」という気づきでした。これらは、単なるツールの使い方を超えた、生成AIとの協働の本質を示すものです。
今後は、この学びを活かし、各自の業務に積極的に生成AIを取り入れ、さらなる業務効率化と創造的な価値創出を実現していただくことを期待します。
C-tableは引き続き、ZOU様に対してさらなる10時間のワークショップを継続し、参加者が生成AIを使いこなし、「業務の効率化」や「クリエイティブな発想」に貢献できるよう支援していく予定です。


C-tableの優位性:AI導入を成功に導く4つの強み
私たちのワークショップには、以下の強みがあります。
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研修を超えて、未来を描く対話を促す
ツールの使い方ではなく、「AIでどう未来を描くか」を共に考える。
だから学びが「知識」ではなく「行動」へつながる。 -
トップダウンではなく、ボトムアップ
経営層の号令ではなく、現場の「やってみたい」から始める。
小さな挑戦が全体の文化を変えるエネルギーになる。 -
操作指導ではなく、心理変容を設計
「体験+対話」を組み込む。
「AIで何ができるかわからない」から「業務へ活かしたい」へと認識を変える。 -
実証で終わらず、実装まで伴走
ワークショップ後もアイデアを試作・業務に組み込む相談のフォローアップを実施しています。
AI導入は「IT投資」ではなく「人への投資」。最初の一歩をご提案します。
都留市役所で行った生成AI体験ワークショップを通じて、改めてはっきりしたことがあります。
それは──AIの価値は「操作方法を覚えること」ではなく、「組織の文化を変えること」にあるということです。
AIそのものは、あくまで道具にすぎません。
本当に大切なのは、「その道具をどう使い、どんな未来を描くのか」を組織全体で考えることです。
C-tableは、その対話を後押ししながら、現場から始まる小さな一歩を、やがて大きな変化へと育てていく伴走をします。
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当社では、自治体さまや多数の地域企業さまのデジタル変革を伴走支援しています。また、人と組織のためのAI活用を目指す「生成AI体験ワークショップ」も開催しております。デジタル、生成AIを活用した業務変革、組織変革、人材育成研修をご検討の方は、是非お気軽にお問い合わせください。
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