【製造業DX事例|株式会社ユーシン】請求業務90%削減・図面8万枚を即時検索。町工場DXが変えた経営の景色(株式会社ユーシン様)
約8万枚の紙図面から目的の1枚を探し出し、2人がかりで丸一日かけて請求書を発行する…そんな非効率が日常だった株式会社ユーシン様。
DXは、この風景を一変させました。
タブレット1台で図面は瞬時に見つかり、請求業務の工数は90%削減。さらに、これまで会計事務所を待たなければ見えなかった製品ごとの利益率もリアルタイムで可視化され、データに基づく迅速な経営判断が可能に。
現場、事務、経営のすべてが強くなったDXの軌跡をご紹介します。
「紙文化の町工場」がDXで変革。リアルタイムデータが経営と現場を強くする
段ボール製造で38年の歴史を持つ株式会社ユーシン(山梨県都留市)。
長年培ってきた技術力とお客様との信頼関係が自慢の会社です。
強い現場力の一方、業務は「受発注と納品・請求は別システム/図面は紙/在庫は現地確認」。
その結果、「お客様からの問い合わせに、すぐに答えられない」「見積りに時間がかかる」「同じ作業を何度も繰り返している」—現場ではなく仕組みの問題でした。
「創業から積み重ねてきた技術と経験を、もっと効率的に活かせないだろうか?」
そんな想いから始まったユーシンのDXプロジェクトが、想像を超える変化をもたらしました。
- 請求書発行時間は半分以下に、担当者も2人から1人へ
月末の締め日に2人がかりで丸一日かかっていた請求書発行業務が、今では1人で半日もかからずに完了するようになりました。
同じデータを二度入力する非効率な作業は完全になくなり、社員は本来の業務に集中できる時間を取り戻しました。
- 欲しい情報が瞬時に見つかる安心感
お客様からの「前回と同じものを」という抽象的な依頼にも、その場で即座に対応可能に。以前は受注番号でしか検索できませんでしたが、今では顧客名や製品名など様々な条件で過去の案件を瞬時に探し出せるようになりました。
- 図面探しの手間がゼロに
以前は、製造指示のたびに、約8万枚の紙ファイルの中から図面を探し回る必要がありましたが、今はタブレット1台あれば十分です。
製品情報と図面データが紐づいたことで、必要な時にワンクリックで表示できるようになり、「いつでも手元にある安心感」が現場に生まれました。
- 在庫確認はデスクで完結
「在庫確認に行ってきます」という日常風景は過去のものになりました。
これまでは倉庫まで足を運び、目視で数えるしかありませんでしたが、システムと連動したリアルタイムの在庫情報をもとに、デスクにいながら正確な経営判断が即座に下せるようになっています。
- リアルタイムなデータ把握で、経営の「勘」を「データ」へ
DX導入により、経営判断のスピードと精度も大きく変わりました。
以前は、製品ごとの正確な原価を把握できておらず、「作れば作るほど赤字だった」という製品が後から判明することもありました。
会計事務所から試算表が上がってくるのを待たないと、会社のリアルな経営状況が見えませんでした。
今では、システム上で原価と売価が一覧で表示され、製品ごとの利益率が即座に分かるようになっています。
これにより、経営者がいつでも正確なデータに基づいて迅速な判断を下せる環境が整いました。
- Slack導入で全社がつながる一体感が醸成
口頭や社内放送が中心だったコミュニケーションは、Slackの導入で大きく変わりました。
納品や運行、事務の状況がリアルタイムに共有され、QRコードを活用した位置情報付きの納品報告で「今どこで何が起きているか」を全員が把握できるようになり、組織としての一体感が生まれました。
「やるか、やらないか」—株式会社ユーシンの経営者の情熱から始まったDXが、請求業務90%削減と全社の一体感を生んだ軌跡
今回、このDX支援の歩みを振り返るべく、荻原照仁社長に直接お話を伺いました。
現場で実際にどのような課題があり、どのように変わっていったのかを、生の声とともにお伝えします。
株式会社ユーシン代表取締役社長 荻原 照仁様
― DX導入以前は、どのような課題を抱えていらっしゃったのでしょうか?
荻原社長: 弊社は創業以来、伝達は口頭、書類はすべて紙で、確認は鉛筆でチェックする、そんな典型的な「町工場」でした。
強い現場力がある一方、業務の仕組みには多くの課題がありました。
まず、情報が完全に分断されていました。製造に回すための受注登録はMicrosoft Accessで、お客様への請求書や納品書は専用事務システム。
同じデータを二度入力する非効率な作業が当たり前になっていたのです。製品名がシステムごとに微妙に違うなんてこともありましたね。
― 現場では、具体的にどのようなご苦労がありましたか?
荻原社長: 一番大変だったのは、受注のたびに約8万枚もの紙の図面ファイルから目的のものを探し出す作業でした。
図面が見つからないと製品IDが分からず、受注登録に進めないのです。時には、別の製造ラインで使っている図面を現場に取りに行くこともありました。
また、請求書の発行も大変でした。締め日には、印刷した複写式の納品書を一枚一枚ホッチキスで止め、分厚くなった束を封筒に入れて送るという作業を、2人がかりで丸一日かけて行っていました。
また、 経営判断の面でも課題がありました。
会計事務所から試算表が上がってくるのを待たないと、会社のリアルな経営状況が見えなかったのです。
― 数ある企業の中から、弊社にご相談いただいた経緯を教えてください。
荻原社長: 「このままではいけない」という強い課題感から、複数のシステム会社に相談したのですが、なかなか対応してもらえませんでした。
そんな中、地元の企業間連携の中でC-tableさんを紹介していただいたのがきっかけです。
他社は既存のパッケージソフトの導入を提案してきましたが、C-tableさんは我々の複雑な業務フローを理解し、ゼロからオーダーメイドでシステムを構築してくれるという点が決め手でした。泥臭いデータ移行や現場との調整にも粘り強く取り組んでくれるパートナーが必要だったのです。
株式会社ユーシンのDXがもたらした未来への確かな手応え
― DX導入後、経営や組織にどのような効果がありましたか?
荻原社長: 経営判断のスピードが格段に向上しました。売上や原価、利益率がリアルタイムで把握できるようになったことで、どの製品が本当に利益を生んでいるのかをデータで判断し、迅速に次の戦略を立てられるようになりました。
今では、Excelでデータを抽出し、分析することもあります。
また、Slack上にエラー内容を共有するチャンネルを設けたことで、失敗事例から学び、PDCAサイクルを高速で回せる組織文化が根付きました。
特に請求書発行業務は、以前は2人がかりで丸1日かかっていたものが、今では1人で半日で終わります。体感では半分以下の作業時間です。何か分からないことがあっても、Slackですぐに聞けるサポート体制も心強かったですね。
― 最後に、DX推進を検討している企業様へメッセージをお願いします。
荻原社長: DXは「やるか、やらないか」の決断次第です。そして、それを進めるには経営者の「社員が幸せになる会社を作りたい」といった強いパッションが不可欠です。
ただし、いきなり全てを変えようとすると現場はアレルギー反応を起こします。大切なのは、段階的に導入し、現場の声を聞きながら改善を続けることです。
実際に使うのは現場の皆さんですから、彼らを巻き込み、会社全体で取り組むことが成功の鍵だと感じています。
DXは目先のコストや手間を乗り越えてでも取り組むべき、「未来への投資」だと確信しています。
「未来への投資」—社長の想いと共に歩んだDXの実践
「結局、DXはパッションなんですよね」と荻原社長は語ります。
「社員が幸せになる会社を作りたい」という強い想いが、非効率な業務プロセスという課題に正面から向き合う原動力となり、現場の従業員を巻き込みながら、組織全体を未来へと動かしていったのです。
株式会社ユーシン様の事例は、DXが単なるシステム導入ではなく、「自分たちの会社をどうしたいのか」というビジョンを実現するための、未来への投資であることを力強く示しています。
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