当社では自治体様とのお取引も多いため、「どのような考え方で官民連携に取り組んでいるのか」と聞かれることがあります。本コラムでは、私たちが官民連携をどのように捉えているのか、その考え方をご紹介します。

「地域を盛り上げよう」という言葉

地域にいると、「もっとまちを盛り上げよう」という話になります。イベントを開く。観光客を呼ぶ。移住者を増やす。新しい施設をつくる。もちろん、どれも大切な取り組みです。ただ私は、その前に一つ、受け入れなければならないことがあると思っています。

「これから、どんどん地域から人が減っていく」 という事実を受け入れることです。

当社のある山梨県都留市も現在の人口は3万人弱ですが、将来はさらに減少していくと見込まれています。これは都留市だけの話ではありません。もちろん、移住者を増やすことには意味があります。ただ、日本全体の人口が減少している中、各自治体が人のシェアを取り合うだけで、全体のパイは増えません。

少なくとも、これから10年、20年の地域を考えるのであれば、

「どうすれば人が増えるか」だけでなく、「人が減っても、どう地域を成り立たせるか」

を正面から考える必要があります。

昔のように賑わっていたまちを復活させるような人口増加は起こらない。
まずその事実からスタートして、これからのまちづくりを考えた方が良いと私は思っています。

そしてそう考えると、行政と民間がどう組むべきかも少し違って見えてきます。

行政は、将来に残る固定費を増やせない

ここでいう「固定費」とは、毎年の利用料や保守費、人員など、一度始めると継続的に負担し続ける費用のことです。

人口が減っても、地域を維持するための費用が同じ割合で減るわけではありません。道路、水道、公共施設などは、人口が2割減ったからといって、維持費まで2割減るものではありません。

一方で、自治体でも人材の確保は難しくなっています。今でも自治体職員の方々は、本当に多くの事業を掛け持ちしながら対応されています。ご一緒する中で、頭が下がることも少なくありません。さらにこれからは、限られた予算と人数で、今ある行政サービスをどう維持していくかという課題が、ますます大きくなっていくはずです。

このような中、行政の立場に立つと、避けたいのは 「将来にわたって残り続ける負担」 が増えていくことです。

例えば、デジタルサービスの導入です。導入時には、国からの補助金や交付金を活用できるものもあります。しかし、数年後に補助がなくなります。そのあとは、毎年の利用料や保守費の負担は自治体に残ることがあります。

いくら住民にとって便利なサービスであっても、その後の財源を確保できなければ、導入の判断は難しくなります。担当者や議会での議論が慎重になるのは、変化に消極的だからとは限りません。そのサービスを5年後、10年後も維持できるかを考えなければならないからです。

「この取り組みは、人が減る時代に持続可能なのか」

行政と民間が一緒に何かをしようとするなら、この視点を共有することが大切だと思っています。

1:行政の仕事そのものを軽くする

住民サービスを良くすることは大切です。ただ、住民向けのサービスだけを増やし、その裏側で職員の仕事や費用が増えてしまえば、人口減少が進む地域では続けにくくなります。
だから、住民サービスの維持・向上と、行政側の仕事を減らすことを同時に考えることが重要です。
例えば、住民からの申請をオンライン化するだけではなく、その後に職員が行っている入力、照合、確認といった作業まで減らすことを考えます。

単に「デジタルにする」のではなく、行政の仕事そのものを軽くするところまで設計する。そうすれば、住民にとって便利になると同時に、行政側も少ない人数でサービスを維持しやすくなります。その結果、職員が本来取り組むべき、より重要な仕事に時間を使えるようになります。

目指すのは、単に人件費を削ることではありません。人が減っても、必要な仕事が回る状態を先につくっておく。民間の技術や工夫を、そのために使うということです。

2:民間が公共的なサービスを担える市場をつくる

もう一つは、地域に必要な公共的なサービスを、民間が事業として担えるようにすることです。

これは、行政の仕事をそのまま民間へ移す、という話だけではありません。地域に必要とされていても、まだ事業として成り立っていないサービスを、どう成立させるかという話でもあります。

地域に必要なサービスだからといって、最初から十分な利用者や売上があるとは限りません。

  • 必要とする人に存在が知られていない。
  • 利用したい人と事業者がつながっていない。
  • あるいは、立ち上げの費用やリスクが大きく、民間だけでは踏み出しにくい。

そうしたところに、公が関わる余地があります。

  • 立ち上げ期の資金を支える。
  • 公共施設や遊休資産を活用できるようにする。
  • 地域のニーズを共有し、住民や企業、団体と事業者をつなぐ。
  • 小さく試し、利用者の声を聞きながら事業を育てる機会をつくる。

そうした条件を、行政と民間で整えていく。ここでいう 「市場をつくる」 とは、必要なサービスが利用され、その対価が事業を支え、地域の中で続いていく仕組みを育てることです。

当社が事務局の一部を担っている「やまなし地域課題解決型起業支援金」も、私はこうした土壌を育てる取り組みの一つだと捉えています。

産業振興という側面ももちろんあります。ただそれだけではなく、地域課題の解決に事業として取り組む人へ、初期投資への補助や伴走支援を届けることで、地域に必要なサービスを担う人や事業が育つことにつながっていくことも目的です。地域に必要なサービスが民間事業として続いていけば、長い目で見れば、公共サービスの維持・向上と、将来の公的負担の抑制を両立できる可能性があります。

「何を始めるか」より「どう続けるか」

人口が増えていく時代であれば、新しい施設をつくる、人を雇う、新しいサービスを増やすという方法も取りやすかったと思います。しかし、人が減っていく時代には、一度増やした固定費を、少なくなった人たちで支え続けなければなりません。

だから、これからの地域づくりでは「何を新しく始めるか」だけではなく、「人口が減っても、続けられる仕組みか」 を同時に考える必要があります。

そしてこれは、行政だけの課題ではありません。地方の中小企業も、同じような環境に置かれています。採用が難しくなり、お客様も減っていく。これまでと同じ人数、同じ市場、同じやり方を前提に経営することが難しくなっていきます。

だからこそ企業側も、人が減っても回る仕組みをつくること。
そして、自社の強みやコアとなる価値を活かしながら、新しい市場に参入していくこと。

が求められていくのだと思います。

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田邉 耕平(たなべ こうへい)
C-table株式会社 代表取締役

山梨県都留市出身。ソニーグループ、Webコンサルティング企業、エムスリーでデジタルマーケティングとプラットフォーム開発に携わる。2016年に都留へUターンし、2017年にC-tableを設立。地方の中小企業や自治体に、AI導入・システム開発を通じた業務や事業変化を伴走支援している。一般社団法人まちのtoolbox 理事。