C-tableは、山梨県都留市を拠点に中小企業や自治体のAI導入・活用を支援しています。
今回は、「私たち自身が社内でどのようにAIを活用しているのか」、そのリアルな現場の仕組みをご紹介します。
少数精鋭のチームで多数のプロジェクトを並行して進める当社では、予定・実績の登録、日報の自動生成、案件の進捗や採算の把握などにAIを組み込んでいます。
ただし、お伝えしたい本質は「AIのおかげで日報作成が楽になった」というツール単体の話ではありません。AIを導入する前に、「全員が同じ情報を見られる状態(社内データの構造化)」を徹底して整えたことこそが、AIが実務で成果を出し始めた最大の理由です。
- どのお客様の、どの案件なのか
- いまどのタスクが動いていて、進捗はどうなっているか
- 誰が何時間稼働し、原価や経費はいくらかかっているか
- 見込みの粗利は、現時点でどう着地しそうか
これらが「人間にも共有でき、AIにも正確に読み取れる形」で一本につながっているからこそ、AIは単なるチャット相手ではなく、頼もしいアシスタントとして機能します。
現場の課題:「案件の状況が、担当者の頭の中にしかない」
多くの企業では、日々の仕事に関するデータが各所にバラバラに分断されています。
- 顧客情報は「CRM(顧客管理システム)」
- 案件の進捗は「Excel」や「タスク管理ツール」
- 日常の業務連絡は「ビジネスチャット」
- 勤怠や作業時間は「工数管理シート」
- 売上や経費は「会計ソフト」や「請求台帳」
それぞれの情報は存在しているものの、個人のPCや別のクラウドサービスに散らばり、互いに連携していません。その結果、次のような問題が日常茶飯事になります。
進捗や採算が見えない:
「この案件はいまどこまで進んでいるか」「いまいくら費用がかかっていて、利益は残るのか」を把握しようとするたび、管理者が各所から数字をかき集めて手作業で突き合わせなければならない。
現場の二重・三重入力の負担:
社員は、朝礼で予定を話し、日報に作業内容を書き、工数表にも同じ時間を入力し、チャットで上司へ進捗を報告する。
数字の不整合とタイムラグ:
「日報には書いたが工数表には未入力」「チャットで報告したのに管理台帳に反映されていない」といったズレが起き、経営陣が知りたい正確な着地数字は、月末・翌月の集計まで見えてこない。
以前の当社も、まさにこの課題に直面していました。
最初のステップ:全員が同じ案件情報を見られる「データ構造」をつくる
そこで当社では、AIツールを導入する前に、まず社内の情報構造を一本のツリー状に整理・統合しました。

顧客 → 案件 → タスク → 予定・実績 → 工数 → 経費→原価・粗利
社内システム上でお客様(顧客)の下に「案件」が紐づき、案件の下に具体的な「タスク」がぶら下がります。各タスクには担当者と期日が設定され、案件ごとに売上予定額やメンバーの人件費単価、外注・経費予算が紐づいています。
これにより、経営者もメンバーも、全員がまったく同じ画面で案件の全体像を確認できるようになりました。「誰が何を担当し、何が終わり、何が残っているのか」を個別のチャットで聞き回る必要はありません。AIを入れる前に、まず「人間同士がオープンに共有できる土台」をつくったのです。
社員が入れるのは「毎日の予定と実績」
仕組みが整ったことで、現場メンバーの日々の入力負担は大幅に減りました。社員が毎日入力するのは、朝の予定と夕方の実績だけです。
Googleカレンダーと連携
社内システムはGoogleカレンダーと同期しており、社員はカレンダー上で作業予定を組みます。
タスクを選んで入力
カレンダーに入力できるのは、社内システムに登録された「案件のタスク」のみに絞られています。
工数が自動集計
カレンダー上で「どのタスクに何時間使ったか」を記録するだけで、その稼働時間が自動的に該当案件の工数としてカウントされます。
社員は「経営管理のための別シート」を開く必要がありません。自分の仕事のスケジュールを管理する行為そのものが、そのまま案件の進捗・工数データへと直結します。
予定と実績から、AIが日報を自動生成する
これまでなら、予定と実績を入力した後に「今日やったこと」を日報として改めて文章にまとめる作業が発生していました。
現在は、AIが社内システムから当日の予定・実績データを自動で取得し、所定のフォーマットに整えてSlackへ自動投稿します。
- 人がやること:カレンダーで予定と実績を記録する
- AIがやること:そのデータを集約・要約し、日報として共有する
「予定・実績の登録」「工数の入力」「日報の執筆」「上司への進捗共有」という4つの作業が、1回のアクションに集約されました。社員の入力の手間を減らしながら、社内でリアルタイムに共有される情報の質と量を飛躍的に増やすことに成功しています。
月末を待たずに、案件の「採算」がリアルタイムで見える
日々の予定・実績が案件タスクと直結しているため、メンバーの工数は毎日自動更新されます。工数が分かれば、人件費を掛け合わせた現在のプロジェクト原価が即座に算出され、案件の売上額と引き算することで「現時点の見込み粗利」が日次で把握できます。
- 案件の進捗率は順調か
- 誰が何時間を投下しているか
- 現在までの累積原価はいくらか
- 最終的にいくらの粗利が残る見込みか
もちろん税務や月次決算は別途必要ですが、
- 「想定より工数が膨らんでいるから、仕様や進め方を早めに見直そう」
- 「粗利が圧迫されているから、追加要望の対応範囲を再交渉しよう」
案件が終わった後に反省するのではなく、案件が進行している最中に軌道修正の判断を下せるようになります。そしてこの数字は経営陣だけでなく、全社員が透明性を持って確認できるようにしています。
データが整っているからこそ、AIが教えてくれる
情報が綺麗につながると、AIの役割は日報生成などの「定型作業の代行」を超えていきます。案件、タスク、期日、実績、工数が結びついているため、AI自身がプロジェクトのコンディションを把握できるようになるからです。
- 「〇〇案件のタスクAは、期日まであと2日ですが完了していません」
- 「この案件は、当初の予定工数を20%オーバーしています」
- 「このペースで工数が増加すると、見込み粗利が目標値を下回る可能性があります」
毎日数字を監視し、異変があればAIがアラートを上げてくれる。
これは、AIが勝手に空気を読んでいるわけではありません。「人間が見ても、AIが見ても意味が理解できるようにデータが整理されている(AI-Readyな状態)」だからこそ、AIが現場で機能するのです。
仕組みの裏側:MCPとSkillsによるデータ連携
私たちの環境では、社内システムとAIをつなぐインターフェースとしてMCP(Model Context Protocol)やSkillsを活用しています。
そして、取得した予定と実績をどのように日報へ整え、どこへ投稿するかを、Skillsという手順としてAIに持たせています。
簡単に言えば、役割は次のように分かれています。
- 社内:お客様、案件、タスク、予定、実績、工数などを管理する
- Googleカレンダー:日々の予定を扱う
- MCP:AIが社内システムの情報を取得する
- Skills:取得した情報を日報の形式に整える
- Slack:日々のコミュニケーション、作成した日報を社内で共有する
ここで強調したいのは、特定の技術名そのものではありません。重要なのは、「AIが必要な情報に安全にアクセスでき、取得した情報をどう加工してどこへ渡すかの手順(ルール)が明確に定義されていること」です。
莫大なコストをかけて基幹システムを一から作り直す必要はありません。いま現場で使っているツール同士の関係性を整理し、AIが受け取れるように橋渡しをするだけで、業務は劇的につながります。
AIが働ける会社とは
AIが真に機能する会社とは、超高額なシステムを導入した会社ではありません。「人間同士がオープンに共有でき、かつAIにも読み取れる形で日々の業務データが蓄積されている会社」です。
社内の情報が分断されたままでは、AIにできるのは「一般的なビジネス文書の下書き」や「調べ物の回答」といった表層的なアシスタント業務にとどまります。しかし、自社の生きた業務データがつながっていれば、AIは日報を作成し、進捗を見守り、遅延に気づき、採算の変化を警告してくれる「現場の頼れるパートナー」にもなります。
AIを入れたから情報共有が進んだのではありません。全員で共有できる仕組みを整えたからこそ、AIも一緒に働けるようになったのです。
経営者は月末を待たずに経営判断ができ、現場の社員は面倒な二重入力や報告作業から解放される。「経営数字の見える化」と「現場の働きやすさ」は、どちらかを犠牲にするものではなく、一つの情報基盤を共有することから同時に実現できます。
明日からできる、最初の一歩
最初からすべてのデータを完璧につなぐ必要はありません。
まずは、社内で「同じ内容を2回以上手入力している作業」を1つ見つけることから始めてみてください。
いきなりAIを契約するのではなく、「社内で同じ情報をスムーズに見られる状態」をどうつくるか。
どのデータからつなぎ、どのツールをどう連携させ、どこからAIに任せるべきか。現場に合った進め方を、まずは気軽に相談してみませんか。