生成AIの活用が急速に広がる一方で、地方の中小企業の現場では、今も多くの業務が紙や電話、FAX、Excelに支えられています。
電話で受けた注文を紙に書き、あとからExcelへ入力する。 製造に必要な図面を、棚に並んだファイルから探す。 現場の勤務状況を電話で確認し、月末にまとめて請求書をつくる。
こうした日常を前に、「うちはデータが整理されていないから、AIはまだ早い」と感じている経営者の方は少なくないのではないでしょうか。
私たちは、むしろ逆だと考えています。
紙・電話・Excelに支えられた業務が多い会社ほど、AIやデジタルの力で良くなる伸びしろが大きい。
大切なのは、いきなり最新のAIツールを導入することではありません。まず、会社の中にある情報と業務の流れを整理し、必要なときに使える状態にすること。この記事では、その考え方を、私たちがご一緒した4つの事例とあわせてお伝えします。
AIを入れるだけでは、業務は変わらない
生成AIは、文章の作成、情報の要約、データの分析までこなせる便利な技術です。ただし、AIは会社の中で何が起きているかを、最初から知っているわけではありません。
- お客さまから、どんな依頼が来たのか
- 過去に、どの製品をどの図面で納めたのか
- 誰が、どの現場で働いたのか
- いくらで受注し、どれだけ利益が出たのか
こうした情報が紙・電話・Excel・メール・担当者の記憶に分かれたままでは、せっかくAIを導入しても、力を発揮しきれません。
言い換えれば、AI活用の前に必要なのは、会社の仕事を「AIが理解できる形」に整えることです。
紙やExcelが悪いわけではない
紙やExcelは、決して悪い道具ではありません。手軽に使えて、現場ごとの細かな事情にも柔軟に対応できるからこそ、長年使われてきました。見直したいのは、紙やExcelを「使っていること」ではなく、情報がそれぞれの場所に分かれ、業務どうしがつながっていないことです。
たとえば、電話で受けた注文を受注管理に入力し、同じ内容を請求のためにもう一度入力しているとします。手間が二重になるだけではありません。受注と請求の情報が別々に管理されているために、
- どの案件が請求済みか、確認に時間がかかる
- 受注から納品・請求までのプロセスが分からない
といったことが起こります。
必要なのは「紙をなくすこと」ではなく、業務の中で生まれる情報をつなぐことです。ここからは、4つの事例をご紹介します。
事例①:EDI・紙図面・Excel。一つひとつはあっても、つながっていなかった
金属加工を手がける株式会社奥脇製作所様では、受注から製造準備までの情報が、複数の場所に分かれていました。受注情報はEDI(企業間の電子データ受発注)で届き、加工に必要な図面は紙で、製造の進捗はExcelの作業管理票で管理されていました。
一つひとつを見れば、すでにデジタル化されている業務もあります。ただ、EDIの受注情報と紙の図面、Excelの管理票は別々に管理されていたため、受注が入るたびに担当者が内容を確認し、図面を探し、注文書や作業指示書を準備する必要がありました。受注が集中する時期には、製造を始める前の準備に、特に多くの時間を割いていました。
そこで私たちは、EDIの受注情報と製品情報・図面・作業指示をつなぐ仕組みを開発しました。受注が入ると、製造に必要な注文書・図面・作業指示書が自動で準備・印刷されるため、一件ずつ転記したり、棚から図面を探したりする作業がなくなりました。
その結果、製造を始めるまでの準備時間が短くなり、同じ人数で処理できる仕事量は約1.5倍に増えました。設備や人員を増やす前に、今いる人たちがより多くの仕事をこなせる状態が生まれたのです。

事例詳細はこちら:
手作業だった図面探し・指示書づくり・出荷を効率化。属人化を解き、受注増に応えた奥脇製作所のDX
事例②:約8万枚の紙図面を、「探さなくていい」仕事へ
段ボールの企画・製造会社である株式会社ユーシン様では、受注・図面・在庫・請求・経営データがそれぞれ異なる方法で管理されていました。受注登録はMicrosoft Access、納品書や請求書は別の事務システム。同じ情報を二度入力する場面が日常的にありました。さらに、製造に必要な図面は約8万枚の紙ファイルで保管され、受注のたびに目的の一枚を探す必要がありました。
そこで、受発注・図面管理・請求・在庫・経営データを一つにつなぐ、オーダーメイドの基幹システムを開発しました。
約8万枚の図面はタブレットからすぐに検索できるようになり、月末に2人がかりで丸一日かかっていた請求業務は、1人で半日以内に完了するようになりました。製品ごとの利益率も、リアルタイムで確認できます。
これは、紙の図面をPDFに置き換えた事例ではありません。受注した製品と図面・在庫・請求・利益をつなげたことで、現場の作業だけでなく、お客さま対応や経営判断まで変わった事例です。

事例詳細はこちら:
口頭・紙・鉛筆だった町工場が、図面8万枚の検索も請求も「探さない・待たない」仕事へ
事例③:紙の配置表と電話連絡を、使い慣れたLINEでつなぐ
警備業を営む株式会社ケイビイワイ様では、警備員の配置をホワイトボード・紙の管制表で管理し、隊員への連絡は電話で行っていました。勤務実績の集計や給与計算、請求書の作成も手作業が中心で、現場が増えるほど、管制・連絡・集計に特定の担当者が多くの時間を割く状態になっていました。
そこで、配置・勤怠・給与・請求を一つにつなぐ業務管理システム「KB1」を開発しました。隊員の方は、新しい専用アプリの操作を覚えるのではなく、普段から使っているLINEで出勤・退勤の打刻や現場報告を行います。日々の勤務実績はそのまま給与計算と請求につながり、顧客別の請求書も自動でつくれるようになりました。

事例詳細はこちら:
紙・電話・手作業を全てデジタル化。警備会社の業務管理DXを伴走支援
事例④:データを整えると、AIが実務で働き始める
自治体向けの水道開閉栓申請システムでは、住民の方がLINEから入力した住所と、市役所が管理する水道マスタの住所が一致しない、という難しさがありました。番地の表記や漢字、建物名の有無など、人が見れば同じ住所でも、システム上は別の住所として扱われてしまうのです。
当初、自動で照合できた割合は約1%。残りは職員の方が目視で確認していました。そこで、ベクトル検索(言葉の“意味の近さ”で探す検索技術)と大規模言語モデルを組み合わせ、表記のゆれた住所の候補をAIが探し出す仕組みを導入しました。その結果、自動照合率は約80%まで向上し、1件あたり3〜5分かかっていた確認作業は約1分に短縮されました。
AIは、それだけで業務を変える魔法の道具ではありません。申請情報と既存のデータをつなぐ仕組みがあり、業務のルールと確認の方法が整理されているからこそ、AIは実務の中で働けるようになります。

事例詳細はこちら:
住所の自動照合を約1%→約80%へ。LINE申請率7割、確認は1分。水道開閉栓のオンライン化をAIで進化
AI活用は、業務の「見える化」から始まる

AIを活かせる会社になるために、最初から大きなシステムは必要ありません。まずはそれぞれ業務について、関係者で流れを書き出してみることです。
- どこから仕事の依頼が入ってくるか
- 誰がその情報を受け取るか
- 紙やExcelなど、どこに記録しているか
- 次の担当者へ、どのように伝えているか
- 最後にどんな成果物や請求が発生するか
流れを整理すると、二重入力、待ち時間、情報の分かれ目、特定の方への集中など、課題が見えてきます。AIの使いどころを考えるのは、その後で十分です。
あなたの会社にも、こんな業務はありませんか
- 同じ情報を、複数のシステムやExcelに入力している
- 必要な書類や図面を探す時間が、毎日ある
- 電話や口頭でしか共有されていない情報がある
- お問い合わせを受けても、すぐに答えるのが難しい
- 月末に集計や請求作業が集中する
- 担当者がお休みの日は、仕事が進まない
当てはまるなら、それは伸びしろです。AIを導入する前に、業務と情報の流れを整理するだけでも、大きく良くなる可能性があります。
情報を会社の資産に
私たちC-tableは、AIやシステムを導入すること自体を目的にはしていません。まず現場の方々にお話を伺い、業務がどう動いているのか、どこに負担があり、何を残すべきなのかを一緒に整理します。そのうえで、業務の流れを少し変える、情報を一つにまとめる、小さなシステムをつくる、既存システムどうしを連携する、AIを一部の業務に組み込むそれぞれの会社に合った方法を一緒に考えます。つくって終わりではありません。地域に根ざし、ポジティブな変化を産み出し続けられるよう数年間ずっと伴走支援します。
紙・電話・Excelの中には、会社が長年積み重ねてきたお客さまの情報と現場の知恵が眠っています。捨てるのではなく、つなぎ直して、会社の資産として活かす。
紙・電話・Excelで動く会社を、AIが働ける会社へ。
まずは、いまの業務の話を聞かせていただくことから始めませんか。