OVERVIEW
概要
- 組織/分野
- 都留市役所 産業課 / 自治体(観光・まちづくり)
- 地域
- 山梨県都留市
- 対象
- 市民・観光客(特に40歳以下の若い世代)
- つくったもの
- 「つるのルーツ」= 歴史ニュースサイト + WebAR + LINE公式アカウント(城下町ポイント)を統合した仕組み
- もともとの課題
- 城が現存しない城下町で、若い世代が歴史に触れる機会が少なくなっていた
- うれしい変化
- 利用者は非利用者より、城下町への愛着が 約15%高い / 2022年度比で +18% / 40歳以下の若い世代にも愛着が広がった
- 効果が見えるまで
- サービス開始(2023年5月)の1年後、市民アンケートで市民の城下町への愛着の向上が確認された。
- 公開時期
- 2023年5月 サービス開始
- この先
- 歴史を入り口に、まち全体への愛着・定住へ
SUMMARY
まとめ
▶ きっかけ/課題
都留市役所産業課からの当初のご依頼は、「かつてあった城と城下町の町並みをARで再現したい」。しかし、本当に目指していたのは城下町としてのアイデンティティを未来へ引き継ぐこと。特に若い世代が歴史に触れる機会の少なさが課題でした。
▶ 取り組み
ARは実装する前提で、その手前のコンセプトから一緒に問い直すことを提案。歴史ニュースサイト・WebAR・LINE公式アカウントをひとつの仕組みに統合した「つるのルーツ」を形にしました。
▶ うれしい変化
サービス開始から1年。利用者は非利用者より都留市が城下町だということへの認知・愛着が+18%。当初の課題だった40歳以下の若い世代にも、愛着が広がりました。
BACKGROUND
「ARでお城を再現したい」。その依頼の、ほんとうの目的
都留市役所産業課からの当初のご依頼は、「かつてあった城と城下町の町並みをARで再現したい」というものでした。都留市は江戸時代に谷村藩の城下町として栄えた歴史を持ちますが、城は現存していません。ARで往時の姿を見せることで、市民や観光客に歴史を体感してもらう、という構想です。
ただ、市が本当に目指していたのは、ARそのものではありませんでした。その先にある「市民の城下町としてのアイデンティティを、引き継いでいきたい」という思いです。

観光戦略の一環で行ったアンケートでは、60歳以上の世代が城下町に強い愛着を持つ一方で、40歳以下の若い世代は、歴史に触れる機会が少なくなっていることがわかりました。
歴史を知る世代が少なくなっていくなかで、城下町としてのアイデンティティをどう引き継ぐか。ARを作ること自体は手段であって、目的ではない。そこに立ち返るところから始めました。
WHY C-TABLE
なぜ、C-tableと進めることになったのか
当初はAR制作のご依頼でしたが、私たちがお伝えしたのは、ひとつの提案でした。
「ARは実装する前提で、その手前にあるコンセプトから、一緒に考えませんか」。
ARで城を再現しても、一度見て終わりでは、市民のアイデンティティにはつながりにくい。日常のなかで繰り返し歴史に触れる仕組みがなければ、愛着は育ちにくいのではないか、そう考えたからです。技術ありきではなく、目的から始める。この方針に共感いただけたことが、ご一緒する出発点になりました。
APPROACH
ARを作る前に、「都留市の良さとは何か」を問い直す

都留市役所産業課とC-tableは、まず「都留市の良さとは何か」を問い直すワークショップを行いました。城跡や町並みといった目に見える遺産だけでなく、市民性や暮らしのなかにある価値にも目を向け、プロジェクトのコンセプトを再構築していきました。
そこから導き出された方向性をもとに形になったのが、3つの機能を組み合わせた「つるのルーツ」です。
- 歴史ニュースサイト … 都留市の歴史を掘り起こして発信する
- WebAR … 歴史的スポットでスマートフォンをかざすと、城下町の町並みが現れる
- LINE公式アカウント … 記事の閲覧やARスポットの訪問で「城下町ポイント」が貯まる
「城下町ポイント」は市内の提携店舗で使えるため、歴史への関心が、地域経済にもつながる構造です。ARは当初の構想どおり実装しつつ、それだけに頼らない設計にしました。技術ありきではなくコンセプトから見直し、方向性を定めたうえで実装を重ねて、2023年5月のサービス開始に至りました。

RESULTS
うれしい変化は、使う人ほど“まちが好き”になったこと
愛着が約15%高い
利用者 vs 非利用者
城下町への愛着(2024年調査)
3000人超
都留を楽しむ人
LINE登録者数
40歳以下にも
愛着が明確に広がった
当初の課題だった若い世代
2024年5月、サービス開始から1年が経ったタイミングで、市民向けアンケートを実施しました。「つるのルーツ」を使っている人は、使っていない人よりも、城下町への愛着が約15%高い。2022年度の調査と比べると、18%の向上でした。言いかえると、この仕組みに触れている人ほど、“まちが好き”になっているということです。

このプロジェクトが当初の課題としていたのは、若い世代が歴史に触れる機会の少なさでした。その点で、40歳以下の若い世代でも利用者の愛着が明確に高まっていたことは、大きな手応えになりました。世代やエリアを問わず、利用者全体で同じ傾向が確認されています。LINEを入り口にしたことで、これまで歴史に関心の薄かった層にも、自然に届いたかたちです。
効果は、城下町への愛着にとどまりませんでした。「水が美味しい」「自然が豊か」「暮らしやすい」といった都留市の多面的な魅力についても、利用者の愛着のほうが高くなっています。
「家族と歴史について話すようになった」
「知らなかった場所を、訪れるきっかけになった」
こうした声も寄せられ、歴史を入り口にしたデジタルの仕組みが、まちへの関心を市民の日常へと広げている様子がうかがえます。
人口減少という課題への取り組み
多くの自治体が抱える、根の深い課題が人口減少です。住み続けてもらうためには、そこに暮らす人がまちへの愛着を持っていることが欠かせません。
歴史を次の世代へ引き継ぎ、若い世代を含めた、まち全体への愛着が育まれていく。今回の取り組みは、人口減少という大きな課題に向き合うための、ひとつの答えになると考えています。